フィギュアスケートファンの資料庫

フィギュアスケートの採点に納得がいかない、ちゃんと考えたり主張するための資料が欲しい、というとき役に立つようなサイトにしたいと立ち上げました。まだまだコンテンツは少ないですが、だんだん充実させたいと思います。また、書式の不統一や読みにくさにいつてはおいおい改善したいと思いますので、よろしくお願いします。ここで扱うのはシングル競技に絞らせていただきます。

フィギュアスケート男子シングルにみる ジェンダー・クロッシング

フィギュアスケート男子シングルにみる ジェンダークロッシング

―21 世紀初頭のオリンピックにおけるパフォーマンスから―
                 

                          相原 夕佳
                      日本大学大学院総合社会情報研究科

https://atlantic2.gssc.nihon-u.ac.jp/kiyou/pdf16/16-113-124-Aihara.pdf

 

この論文はジャッジの判定について、とりわけ

ジェンダーに関するバイアスという視点で書かれたものです。

「芸術とスポーツの融合であるフィギュアスケートは、スケーターたちのアスリートとしての卓越した身体能力と芸術性の高い表現力によって多くの観客に感動を与え、社会的にも影響を及ぼしてきた。しかしまた、自由な表現を阻む様々なイデオロギー・バイアスが存在したことも事実である。そして、その中でも特に大きな抑圧を及ぼしたのは、社会が規定する男性性、女性性を表現することを要請するジェンダー・バイアスであろう。」

フィギュアスケート界は依然として保守的であるが、確かな変化が起こりつつある。その契機をもたらしたのは、21 世紀初頭に圧倒的な存在感を示した二人のスケーター、エフゲニー・プルシェンコ(Plushenko, Evgeni, ロシア)とジョニー・ウィアー(Weir, Johnny, アメリカ)である。本稿では、彼らをはじめとする男子シングル選手のオリンピックでの演技に着目し、21 世紀のフィギュアスケートにおけるジェンダークロッシングの意義と課題についてパフォーマンス・スタディーズの視座で考察する。」

 

という問題を提起し、論文の中には重要な人物としてプルシェンコとジョニー・ウイアーが大きく取り上げられています。そして、ジェンダー・バイアスに対して、技術面で女性的とされる柔軟性を取り入れたプルシェンコ、男性女性を越えて芸術性を高めたウイアーの演技のについてジェンダーに捕らわれた価値観を変革してきた存在として高く評価しています。さらに、論文の最後近く123ページでその後継者としての羽生選手のソチオリンピックでのロミオとジュリエットの演技にも触れています。

アメリカが特に男性性を重視しジョニー・ウイアーへの評価を不当に低く抑えてきたということはよく言われるところですが、歴史的な経緯を踏まえてこの問題が書かれていること、男子シングルでのジェンダーのとらえ方の変化についても考察されていて興味深い論文だと思います。